マイホームの購入を決めたとしても、設計や建設をどの会社に注文すればいいか、迷う方も多いのではないでしょうか。ハウスメーカー、工務店、設計事務所、地域ビルダーと選択肢が多い分、自分に合った建築会社を選ぶのは難しいですよね。
そこで、InstagramなどのSNSでマイホームづくりやハウスメーカー選びのポイントを紹介している建築士のぽりんきさんに、建築会社の失敗しない選び方を教えていただきました。
——注文住宅を取り扱う会社には、ハウスメーカー、工務店、設計事務所、地域ビルダーがありますよね。それぞれどのような違いがあるのでしょうか?
ハウスメーカーは全国展開している大手企業で、規模が大きく、知名度が高いのが特徴です。社名は出しませんが、みなさんも聞いたことがある企業が多いと思います。設計士やインテリアコーディネーターも自社で抱えているので、まるっと任せることができます。
工務店は地域密着型の建築会社で、中小規模の企業が多いですね。社長のほか、従業員は3〜5人、大工が数人という会社を思い浮かべていただければいいかなと思います。地域に根ざした家づくりや、材質にこだわりたい方に向いています。
設計事務所は建築士や建築デザイナーが運営する事務所で、規模はさまざま。独自性の高い家づくりをサポートしてくれるので、唯一無二のデザイン住宅を建てたい方におすすめですね。
地域ビルダーはハウスメーカーと工務店の中間的な立ち位置にある企業で、地域展開を中心にしています。ハウスメーカーとの大きな違いは、広告費が抑えられているので、より安価であることでしょうか。企業の規模や業態が多様であるため、見極めが一定必要になります。
——どのようにお願いする会社を決めたらいいのでしょうか。
まずは、選択肢として絞りやすい工務店と設計事務所について考えてみると、地元の工務店を選ぶ方は、「両親があの会社で建てたから」という縁がある場合が多いですね。最近では、高い技術力を提供する「スーパー工務店」も存在します。地域の山から採れた断熱素材を使うなど、木をふんだんに使った家づくりもできるので、素材にこだわる方に選ばれています。
設計の希望にも柔軟に対応してくれるので、「私たちはこういうものが作りたい!」と明確な理想がある方にもおすすめです。ハウスメーカーに比べて運営費や広告費などの中間コストが抑えられるため、価格がリーズナブルな場合が多いですが、会社によって技術やサービスにはばらつきがあります。
一方で設計事務所は、「この建築士に作ってほしい!」という理想がある方に向いています。「どうしても石を使いたい」「美術館みたいな家を作りたい」など、オリジナル性の高いデザインを重視する方に最適です。建築士と直接対話しながら細かい要望を反映させたい方や、他とは違うこだわりの家に住みたい方にもいいでしょうね。完全自由設計なので細部まで要望を聞いてくれますが、設計費用が発生して高額になることもあります。
——工務店と設計事務所のどちらにも当てはまらない場合は、ハウスメーカーか地域ビルダーを選ぶといいのでしょうか?
はい。この2つのどちらにするかは、ネットや本でリサーチして、いろいろな家を見てから決めるのがいいでしょうね。そこで好みの内装や外装を見つけたら、「こういう家を建てている会社があるんだ。じゃあ行ってみよう!」という感覚で実際に見に行きましょう。あまり深く考えずに、気軽に足を運んでもいいと思います。おおよそ5から7社くらい行くのがおすすめですね。
デメリットは、企業の規模や業態が多様であるため見極めが必要な点。
——5から7社までの候補を決めたら、次はどのように絞っていけばいいのでしょうか?
次は3社まで絞りたいですね。その際、判断するポイントは3つ。1つ目は構造や性能を見ましょう。
木造住宅は、自然素材のあたたかみや居心地の良さを重視したい方におすすめです。特に、木をふんだんに使ったデザインや自然素材のフローリングを希望する場合に向いています。木材は熱伝導率が低いため、冬でも暖かく感じやすいのが特徴です。比較的コストも抑えられるため、予算重視の方にもいいですね。
鉄骨構造は、大きな窓や広い空間を確保するデザインを実現しやすいです。例えば、「壁を極力少なくして開放的なリビングにしたい」「吹き抜けを広く取って大空間を作りたい」というような要望がある場合に適しています。また、柱や壁に頼らず強度を保つ設計が可能なため、1階に車庫を設ける場合や都市部の狭小地に建設する場合にも適用しやすいです。
ただし、鉄骨は木造に比べて熱伝導率が約400倍高く、冬場は冷えやすいというデメリットがあるので、断熱性能をしっかり確認する必要があります。
希望する家のイメージを固めたうえで、こうした構造ごとの特性を理解し、それに応じて建築会社を選ぶと失敗が少なくなるはずです。
——2つ目のポイントは何でしょう?
価格帯ですね。理想の住まいを叶えるための予算感と、住宅ローンで借りることができる金額感を把握することが重要です。住宅ローンは年収の5から7倍の範囲内が望ましいといわれていますが、あまりイメージがわかない方は、「今の家賃にプラスでどこまで払えるか?」「ボーナスは全部返済に充てられるのか?」など、今の生活とどれくらい変わるのかを軸に考えてみると分かりやすいと思います。
そして、3つ目のポイントは営業担当者との相性ですね。
——相性のいい営業担当者はどのように見極めたらいいでしょうか。
まず、過去の実績を確認しましょう。これまでに何件の新築注文住宅を引き渡したことがあるか、直接尋ねてみてください。例えば、年間4、5棟程度の引き渡し経験があれば平均的ではありますが、年間30棟以上の引き渡し経験がある営業は、かなりベテランで信頼性が高いといえます。
実際に、その方を通して家を建てたお客さんの声を聞くのもおすすめです。これまで担当した家を見学できるか、過去のお客さまを紹介してもらえるか確認してみましょう。そのうえで紹介されたお客さまに直接「実際の対応はどうでしたか?」「フォローは十分でしたか?」と尋ねてみるのがいいと思います。実際の声を聞くことで、担当となる方の対応力や人柄をより具体的に把握できるはずです。
——では、3社まで絞った後、1社に絞る時に選ぶコツはありますか?
理想の間取りや設備が本当に実現できるのか、確認してください。最初に「自由設計」と言われても、実際には構造的な制約や予算の都合で希望通りにいかない場合があります。大きな吹き抜けや広い窓など、特定のデザインを希望する場合は、実現可能か確認しましょう。建築会社によって得意なデザインが異なるため、別のハウスメーカーを検討する必要があるかもしれません。
あとは、スケジュール感のすり合わせも大事ですね。希望する引き渡し時期がある場合、その期日で家を完成させられるか確認してください。「来年のクリスマスは新しい家で過ごしたい」といった具体的な希望を伝えておきましょう。
そして、何より実物を見に行けるといいですね。打ち合わせ時に提案された設備や仕様が、実際にどのようなものかを確認できる見学の機会を設けてもらいましょう。
——発注する建築会社の候補が絞れた段階で、見積もりを依頼すると思います。その際、チェックすべきポイントを教えてください。
見積もりの項目は、基礎や構造、外装といった家の基本部分の「本体工事費」、外構工事、給排水工事、照明など本体以外の部分の「付帯工事費」、各種申請費や保証料、設計費などの「諸費用」にわかれます。特にキッチン、浴室、トイレなどの設備は、グレードによって費用が大きく変わるため、標準仕様に含まれるか含まれないかを明確にしておくことが大切です。要望に対して、追加費用が発生するのかどうかを早い段階で確認して、見積もりに反映してもらいましょう。
また、ドアや窓、床材、壁材などの細かい仕様の価格もチェックしてください。細かい仕様の積み重ねで、意外と予算を超過することもあります。見積書に記載されていない場合は、担当者に具体的な金額を確認するようにしましょう。
また、保証期間やアフターメンテナンスの内容も建築会社によって、大きく異なります。一部のハウスメーカーでは、初期保証が30~35年に設定されている場合がありますが、保証期間の延長や点検の費用が別途必要になることも。ですから、契約前でも良いのでこの点は確認してください。定期点検の内容や頻度、自社スタッフと外注スタッフのどちらが対応するかも確認しておけると、より良いですね。
——注意点として、建築会社との間で生まれがちなトラブルを教えてください。
もっとも多いのは、「言った、言わない」のトラブルです。これを防ぐためには、打ち合わせ内容の記録がおすすめです。大きな契約になるので、曖昧な部分を残さないことが大切です。
他にも多いのは、契約した後で希望の間取りが実現できないと発覚することですね。これを防ぐためには、「こういう間取りの家を建てたい」と、建築会社に写真や動画を見せるなどして、しっかり要望を伝えてください。
建築会社選びは、人生で最大級の買い物となるマイホーム計画を成功させる鍵となります。そのため、しっかりと情報収集を行い、焦らず慎重に検討して最適なパートナーを見つけることが大切です。
とはいえ、本記事で紹介したように、建築会社を比較検討する要素は多岐にわたります。自力でフラットに選ぶのが難しい場合は、プロに相談するのも一つの手です。「ちばの住まいコンシェルジュ」では、複数回の面談を通して、住宅に関する情報提供や希望条件の整理、ライフプランシミュレーションを行っているほか、不動産会社・建築会社のご紹介もしています。後悔のない選択をするためにも、ぜひプロへの相談も検討してみてください。
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