住宅ローンを利用するうえでは、金利の安さだけでなく金利タイプの違いにも目を向けることが大切です。住宅ローンには大きく分けて2つの金利タイプがあり、それぞれ返済の仕組みが異なります。
今回は住宅ローン金利のタイプとそれぞれの特徴、自分に合った金利タイプやプランを選ぶためのポイントなどをまとめてご紹介します。
住宅ローンには、「固定金利型(自身が選択した期間中は金利が変わらない)」と「変動金利型」の大きく分けて2つの金利タイプがあり、固定金利型は全期間を固定する「全期間固定金利型」と借入中に変動金利・固定金利を柔軟に切り替えできる「固定金利期間選択型」という2つのプランから選択できます。
どのタイプを選択するかによって、毎月の返済額やトータルの支払額にも違いが生まれるので、まずは金利タイプごとの特徴を押さえておきましょう。
「固定金利型」とは、自身が選択した期間中は金利が変わらないタイプを指します。全期間を固定するか、一定期間のみ固定するかの選択肢があります。
「全期間固定金利型」の特徴は、金利の変動による影響を受けず、借入れ段階で完済までの総支払額が決まっている点にあります。そのため、返済の見通しが立てやすく、安定した返済プランを設計できるのがメリットです。
全期間固定金利型はその他のプランと比べ、金利水準が高く設定される傾向にあります。全期間固定金利型の住宅ローン商品としては、住宅金融支援機構が金融機関と提携して取り扱う「フラット35」が代表的です。
フラット35はさまざまな金融機関で取り扱われていますが、銀行独自の固定金利型の商品を提供しているところもあり、金利や利用条件などを見比べて最適なものを選ぶのが基本です。
一方で「固定金利期間選択型」と呼ばれるプランの特徴は、例えば35年ローンのうち、当初の10年や20年(※)といった一定期間において金利を固定し、その期間が終了したら変動金利に移行、もしくは再度固定金利を選択できるなど柔軟に切り替えることができます。
メリットとしては、お借入れ後の一定期間は安定した返済プランを立てつつ、将来的には金利動向を見ながら有利な選択をできる余地が残されている点にあります。ただし、再契約を行う時は、当初よりも金利が高くなっている可能性もあるので注意が必要です。
※千葉銀行の場合は、2年・3年・5年・7年・10年・15年・20年から選択可能
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「変動金利型」とは、返済期間中に金利変動の影響を受け、支払額が変化するタイプを指します。多くの金融機関では、短期プライムレート(短プラ)と呼ばれる指標を基準としており、毎年4月と10月に金利を見直しています。
短プラは景気や金融政策に左右され、その金利変動をもとに、5年ごとに住宅ローンの返済額が増減する仕組み(5年ルール)です。変動金利型は、固定金利型に比べて当初の金利が低めに設定されているのがメリットです。
また、金融機関によっては、5年毎の見直しで返済額が増加する場合も変更前に対して「125%まで」に上限が制限される(125%ルール)など、極端な負担増を緩和するための仕組みを取り入れていることもあります。変動金利の5年ルールや125%ルールについて、さらに詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてみてください。
住宅ローン金利は、物価や金融政策などに強い影響を受けるため、利用する際には細かな動向を確認しておくことも大切です。2004年以降、住宅ローン金利は継続的に引き下げられており、長く低金利の状態が続いていました。
しかし、2024年の10月に多くの金融機関が基準金利の見直しを行ったことで、変動金利は緩やかな上昇傾向に入っています。また、固定金利についても徐々に引き上げが始まっており、2025年3月時点におけるフラット35の金融機関が提供する借入金利の中で最も多いのは、「返済期間15~20年で1.550%」、「返済期間21~35年で1.940%」となっています。
直近の2年間で比べても、2024年以降は上昇しており、今後も同様の傾向が継続するものと見られています。
住宅ローン金利の違いを体感的に理解するには、実際に返済計画をシミュレーションしながら、支払額の変化を比較するのが近道です。ここでは、以下の試算条件をもとに、それぞれの金利プランでの返済総額や毎月の返済額などをシミュレーションしてみましょう。
シミュレーションの共通条件
なお、返済方法については「元金均等返済」と「元利均等返済」の2通りがありますが、元利均等返済の方が一般的といえるでしょう。
今回は、毎月の返済額が一定になる元利均等返済を選んだ場合でシミュレーションします。
先にも述べたように、全期間固定金利型はその他のプランと比べて金利がやや高く設定されるのが特徴です。そこで、今回は「金利を2.0%」と想定してシミュレーションしてみましょう。
上記の条件で試算した結果は以下の通りです。
毎月返済額 | 13万2,505円 |
---|---|
総支払額 | 5,565万1,862円 |
固定金利型では、当初から総支払額に変動がないため、上記のケースでは安定して毎月13万2,505円を返済すれば、確実に完済できるという計算になります。なお、途中で繰り上げ返済などをする場合はこの限りではありません。
固定金利期間選択型の場合は、「固定期間の年数をどうするか」「固定期間終了後の金利がどのように変化するか」の2つの条件によって、返済額に違いが生まれます。そこで、今回は上記の共通条件に加えて、次の2つのパターンを想定して計算してみましょう。
シミュレーションのパターン
当初期間 (5年間) |
1回目見直し後 (10年間) |
2回目見直し後 (20年間) |
|
---|---|---|---|
毎月返済額 | 12万2,473円 | 12万6,776円 | 13万5,854円 |
総支払額 | 5,516万6,460円 |
当初期間 (10年間) |
1回目見直し後 (10年間) |
2回目見直し後 (15年間) |
|
---|---|---|---|
毎月返済額 | 12万5,434円 | 12万6,902円 | 13万3,875円 |
総支払額 | 5,437万7,820円 |
このように、同じ金利プランでも、細かな条件設定によって支払額には違いが生まれます。今回のケースのように、当初金利が低くても、トータルの支払額が高くなる場合もあります。
最後に、変動金利型のシミュレーションを行いましょう。基本的な考え方は固定金利期間選択型と変わりませんが、変動金利ではより細かなタイミングで変動の影響を受けるのが特徴です。
そこで、借入後に以下のような変動があったと想定して、最終的な支払額をシミュレーションしてみましょう。
シミュレーションのパターン
当初期間 (5年間) |
1回目見直し後 (5年間) |
2回目見直し後 (10年間) |
3回目見直し後 (5年間) |
4回目見直し後 (10年間) |
|
---|---|---|---|---|---|
毎月返済額 | 11万2,914円 | 12万1,157円 | 12万8,403円 | 13万3,047円 | 13万4,658円 |
総支払額 | 5,359万4,437円 |
上記のように金利の変動に応じて、毎月の返済額にも大きな変化が生じます。場合によっては、金利の引き下げにより、返済額が当初より少なくなるケースもあるでしょう。
この先の金利の動きを予測するのは難しいため、いくつかのパターンをシミュレーションしながら、ゆとりのある計画を立てることが重要です。
住宅金融支援機構が公表している「住宅ローン利用者の実態調査」(2024年10月調査)によれば、2024年4月から2024年9月に住宅ローンをお借入れした対象者のうち、利用された金利プランの割合は次のように示されています。
金利プラン | 選択された割合 |
---|---|
変動金利型 | 77.4% |
固定金利期間選択型 | 13.5% |
全期間固定金利型 | 9.0% |
上記のように最も多く選ばれているのは変動金利型であり、その理由はやはり、「金利の低さ」が挙げられます。実際のところ、借入れされた金利水準の回答では「0.5%以下」(37.1%)が最も多く、金利は特に重視されやすい条件と考えられるでしょう。
返済期間については、「30年超~35年以内」(48.6%)が最も多い回答率を占め、多くの方が最長期間に近い設定をしていることが分かります。また、それ以外のデータとして、自己資金割合は「10%未満」(25.1%)、返済負担率は「15%超〜20%以内」(24.9%)がそれぞれ最も多い回答となりました。
このデータをまとめると、全体の傾向として「金利の低さから変動金利を選ぶ」「返済期間は長くとる」「頭金は1割未満」「返済負担額は年収の1/5以内」がスタンダードな選択といえるでしょう。平均データと比べることで、自身の返済プランがどの程度の水準にあたるのかを確かめられるはずです。
引用:独立行政法人住宅金融支援機構『
住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年10月調査)】』
最後に、今回のおさらいも踏まえて、各金利プランがそれぞれどのような人に合っているのかを確認しておきましょう。
返済まで金利が変わらない固定金利型は、金利変動の心配をしたくない方に合った金利プランです。安定した返済プランを立てられるため、心理的な負担も小さくなるのが特徴です。具体的な例として、インフレ・金利上昇局面での賃金上昇カーブが緩やかとなってしまうことが予想される業種にお勤めの方に向いているといえます。
固定金利期間選択型は、借入れ当初の金利を抑えつつ、その後の様子を見ながら都度自分に合った金利プランを選択したい方に向いています。また、借入れ直後に子どもの教育費がかさむ時期があるなど、一定期間の返済額が増えると困る場合に利用されることがあります。
変動金利型は金利や景気動向をチェックしながら、ある程度の予測を立てられる方に向いた金利プランです。金利が上昇するリスクがあるため、暮らしに比較的余裕があり、そのリスクに備えられる人の方が利用しやすいといえるでしょう。
また、返済期間が短い方にも向いています。返済期間が短ければ、そのぶん先の見通しが立てやすくなり、金利が低いうちに完済するといったプランも実現可能です。
住宅ローンには、「全期間固定金利型」「固定金利期間選択型」「変動金利型」の3つの金利プランがあり、それぞれ異なる特徴を持っています。今後の金利変動によっては、金利プランに応じて最終的な総支払額に大きな違いが生まれることもある点をしっかり押さえておきましょう。
「ちばの住まいコンシェルジュ」では、住宅ローン相談やライフプランシミュレーションの作成をしており、中立的な立場でお客さまに寄り添ったご提案を行っています。
相性の良い金利プランはお客さまによって異なるので、住宅ローンについてお悩みの方はぜひご相談ください。
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