2025.8.27 更新
ちばぎん
千葉銀行×エッジテクノロジー社対談 ~AIがもたらす日本の未来とは?~
AIの存在が当たり前になりつつある今、私たちはその力をどのように活用すれば地域のお客さまのお役に立てるのでしょうか? 地方銀行としては異色の“AIネイティブカンパニー”を目指すちばぎんグループでは、国内最大級のAI人材データベースと支援実績を有する100%子会社・エッジテクノロジー社とともに、最高の顧客体験を実現する「地域まるごとDX」に挑戦しています。今回はこの戦略の中核を担う4名に、AIの取り入れ方から今後の課題まで、それぞれの視点から語っていただきました。
千葉県をAI活用のロールモデルに
柴田:
ちばぎんグループの存在意義は、地域の事業活性化をはじめ、すべてのお客さまの豊かなライフスタイルを実現することにあります。このパーパスを達成するためには、もはやITやデジタル、AIといったツールの活用が欠かせません。私たちはAIを地域社会に新たな価値をもたらす非常に有効な手段の一つと捉え、皆さまにそのメリットを還元できるようさまざまな可能性を探っているところです。
島田:
地域を活性化するには、そこに人流を生み出し、年齢や価値観、文化や言語など、さまざまな違いを持った人々が境界線を超えて行き来することが必要です。つまり、多様性が活性化につながるわけですが、言語の翻訳や情報整理が得意なAIを利用すれば、さまざま違いをスムーズに乗り越え、多様な人々のニーズに応えることができます。そういう意味では、首都圏に近く、成田空港などの国内有数のリソースを持つ千葉県でのAI活用は、日本を代表する地方都市活性化のロールモデルになると思っています。
伊藤:
千葉県ならではのリソースでいうと、県内には千葉大学をはじめ、東京大学柏地区キャンパス、さらには伊藤穣一先生が学長(2025年8月現在)を務める千葉工業大学があります。未来のデータ社会を担っていく学生たちと一緒にAIの活用法を考え、彼らの学びをサポートしていけるよう、地域における産学連携の動きも深めているところです。
坂西:
地域の中小事業者に目を向けてみると、AIを動かすために必要なデータが揃っていない企業さまがまだまだいらっしゃいます。AIはベースとなるデータの質がとても重要なので、まずは導入の下地を整えるために、当社の島田が経営者さまの集いに参加させていただいたり、商工会議所を通じてセミナーを開催したりするなど、地域の皆さまにデータの重要性を伝える啓蒙活動にも力を入れています。
「地域まるごとDX」が、千葉県に新たな付加価値を生み出す
柴田:
AIを使うメリットは、仕事に費やす時間、いわゆるコストを大幅に削減でき、新たな価値を生み出すための時間が増えること。私たちもまずは自分たちの業務の効率化に取り組み、お客さまに付加価値を提供するための新たな時間をつくり出してきました。次のステップは、私たちのこのノウハウをお客さまにも知っていただき、生産性の向上とビジネス拡大のお手伝いをすることです。今の仕事が楽になれば、もっと楽しいことを考えたり、他のことにチャレンジしたりする余裕が生まれますよね。これは冒頭に申し上げた豊かなライフスタイルの実現にもつながることですが、「地域まるごとDX」では、このようなAI活用のメリットを千葉県全域に広めていきたいと思っています。
伊藤:
AIは決して何でも屋ではなく、データの「分類」「識別」「予測」を得意とするツールの一つです。ですから業務の効率化とは、過去のデータをもとにAIが予測しながら作業をしてくれる世界をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。それには、やはり坂西さんが指摘していたデータの質や貯め方が重要になります。紙ベースの資料しかない状態で急にAIが機能することはありませんので、法人・個人すべてのお客さまがまるごとデータ化していく過程こそが、「地域まるごとDX」実現への道のりになると思っています。
島田:
生産性を上げるには、売上を上げるか、販管費を下げるかの2択ですよね。B to Cビジネスならば、集めたデータからお客さまのニーズに合わせた提案を行う「One to Oneマーケティング」で売上を上げ、カスタマーサポートへのチャットボット導入などで販管費を下げていく。B to Bビジネスならば、セールスパーソンの行動の可視化によって売上UPのノウハウを共有したり、人がやっていた検品作業などをAIに変えることでコストを削減していきます。今はまだ大企業での事例がほとんどですが、我々としてはこうした知見をストックし、地域の中小事業者さまにもご活用いただけるようにミニマイズしたサービスを提供していきたいですね。
未来への一歩は、AIを正しく理解することから
柴田:
私たちはAIネイティブ企業を目指していますが、全員がソースコードを開発できるAIエンジニアになろうとなんてまったく思っていません。大切なのは、ちばぎんグループ全体でAIという技術を正しく理解すること。できもしないことに時間を費やしたり、本当はできることを見逃さないためにも、AIリテラシーを高める社内教育に力を入れているところです。
島田:
そのポイントはまさに大切で、お客さまに対面する営業部門などもAIを理解していないと、本当の意味での事業の活性化にはつながりません。例えば、ビール売場の陳列をAIでコンサルテーションして売上を伸ばしている企業では、営業部門が自らデータを活用しています。DX部門というのはあくまでそれを支える立場であって、今後は柴田常務がおっしゃるように組織全体での正しいAIリテラシーというものがますます求められるようになると思います。
伊藤:
私たちは今後、AIシステムだけではなく、利用者を想定したAIサービスそのものを作っていく立場になりますから、ちばぎんグループ全体でAIに対する理解を深め、全員が同じレベルで会話できるようにならなければなりませんね。
坂西:
「AIで何ができるのか?」という目線合わせはとても重要です。具体的な業務の改善にはどうしても行員の皆さまの協力が必要ですし、リテラシーが共通していればプロジェクトをスムーズに進めることができます。当社は2024年にちばぎんグループの一員となり、ちばぎんコンピュータサービス株式会社や株式会社ちばぎん総研などとも連携を深めているところですが、お互いの社員がチームとして動くとき、「グループ全体としての最適解は何だろう?」という言葉がよく出ます。個ではなく全体を俯瞰して考えられるというのは、まさにリテラシーの高まりですよね。ちばぎんグループだからこそ抽出できる地域の課題があり、それに対して一丸となって最適解を出せる体制が整いつつあると感じています。
人は楽しいことを考える時代へ
坂西:
よく「AIは人の仕事を奪う」と言われますが、「AIのおかげで人の脳のリソースを創造力の発揮に使えるようになる」とも考えられるはずです。それは、「幸せとは何か」「楽しむとは何か」という従来の価値観や生き方そのものを定義し直し、社会全体の変革につながっていくのかもしれません。
柴田:
結局、何のためにAIを使うのかというと、人が楽しく暮らしていくためなんです。自分たちが幸せになるために、ツールに投資するのは当たり前の行動ですよね。だからAIに仕事を奪われるのではなく、みんなが楽しくなるためにAIを使うということだと思います。
伊藤:
AIによる働き方の変化を考えてみると、「仕事の属人化」がOKになる時代が来るのかもしれません。技術や経験を磨いた個人の脳を、例えば柴田さんの脳をAIモデル化してしまえば(笑)、スキルトランスファーやナレッジ共有を通じて多くの人がその恩恵を享受できるようになりますから。
島田:
仕事を奪われると考える人は、単純に新しいスキルを獲得するのに不安があるのではないでしょうか。人類の歴史を紐解くと、技術を受け入れたからこそ今の生活があるので、やはり私たちはAIという新たな技術をうまく受け入れていかなくてはならないのだと思います。
坂西:
新しいものを前にすると人はどうしても不安になりますが、それは先ほどのお話にもあったように、リテラシーを高めることで解消できる部分がたくさんあります。AIをネガティブに捉えてしまう前に、それを受け入れて新しい価値観を学ぶマインドを大切にしていきたいですね。
サステナブルなAIを、千葉県から全国へ
島田:
先ほど「AIを受け入れていかなくてはならない」と言いましたが、私自身も「AIに使われたくない」とは思っています。どういうことかというと、例えば現在の生成AIは海外ベンダーがつくったLLM(Large Language Model、大規模言語モデル)が主流であり、それを前提にシステムを作ってしまうと、料金体系などさまざまな面で否応なくベンダーの都合に振り回される事態、「ベンダーロックイン」が起きかねないからです。そういった意味でも私たちが目指すべきAIは、海外ベンダーに依存しない、ローコストで特定のタスクに特化したSLM(Small Language Model、小規模言語モデル)なのではないかと思っています。
伊藤:
それにLLMを動かすと、大量の電力を使います。サステナビリティの面から考えると、LLMではなく、日本語に特化したSLMなどの利用が広がっていく動きが予想されています。
坂西:
千葉の印西市にはデータセンターがたくさんありますし、SLMが普及することで「AIは電力を使いすぎる」というイメージから、「AIは地域全体の生産性を上げるもの」という認識に変わっていくといいですね。
島田:
今後はちばぎんグループ内で試行錯誤したAIのノウハウを、TSUBASAアライアンス(※)を通じて全国に広げていくフェーズになります。我々だけが一人勝ちするのではなく、共存共栄しながら生産性を上げていくことがこれからの日本には必要ですから。
柴田:
北は北海道から南は沖縄まで、TSUBASAアライアンスには10行が参加していますが、ちばぎんグループの知見がお役に立つのであれば共有し、逆に他の地域で成功した事例があれば取り入れさせていただく。そうした共創の関係でAIに取り組んでいくことで、さまざまな地域におけるAIの活用法や、日本独自のAI技術というものが見えてくるのかもしれませんね。
TSUBASAアライアンス…千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行、伊予銀行、東邦銀行、北洋銀行、武蔵野銀行、滋賀銀行、琉球銀行、群馬銀行の 10 行が参加する地銀広域連携の枠組み。
柴田:
北は北海道から南は沖縄まで、TSUBASAアライアンスには10行が参加していますが、ちばぎんグループの知見がお役に立つのであれば共有し、逆に他の地域で成功した事例があれば取り入れさせていただく。そうした共創の関係でAIに取り組んでいくことで、さまざまな地域におけるAIの活用法や、日本独自のAI技術というものが見えてくるのかもしれませんね。
※所属、役職およびインタビュー内容は取材当時のものです。