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ちばぎん
2026.7.10 公開
2026.7.10 更新
生成AI時代に残される「人間の責任」とは?
数理的な解析技術を武器に、統計物理学、神経科学、認知心理学、交通工学、物流科学、固体イオニクスなど幅広い分野で研究成果を上げている江崎 貴裕先生。最新著書では生成AIを「人類史上初めて登場した『知能』を提供するインフラ」と捉え、そこから予測される社会変化と次の時代を生き抜くための具体的なヒントを私たちに提示しています。現在は、ちばぎんグループのエッジテクノロジー株式会社の技術顧問としても活躍されている江崎先生に、生成AI時代の仕事のあり方や勉強法について幅広くお話を伺いました。
江崎 貴裕 (えざき・たかひろ)
東京大学 先端科学技術研究センター 先端物流科学寄付研究部門 特任准教授、株式会社 infonerv 創業者/取締役、エッジテクノロジー株式会社 技術顧問
数理モデルやデータ分析の技術を武器に、現在は「次世代のネットワーク物流を可能にする理論の定式化・実装」と「固体材料におけるイオン渋滞の制御」などの研究に注力。また、起業家としては、株式会社infonervを創業し、自動発注・在庫管理アプリケーション「α-発注」を提供。2025年より、ちばぎんグループのエッジテクノロジー株式会社 技術顧問に就任。さまざまな分野を横断して得た知見を、研究・社会実装・教育へと幅広く展開している。
研究者、ベストセラー作家、起業家…3つの顔を持つスペシャリスト
──江崎先生は、東京大学の博士課程を専攻史上初の1年飛級で卒業されてから、渋滞や脳といった幅広いジャンルで研究成果を上げ、ベストセラー書籍を何冊も執筆し、さらに会社経営までされています。まずはこの多岐にわたるご経歴から伺ってもよろしいですか。 私はもともと航空宇宙工学を専攻していて、そこで渋滞学を学びました。渋滞が起こるメカニズムを数理モデルを使って解き明かしていこうというものですが、新しい学問なので決まったやり方がなく、「こういうものにアプローチしてみよう」と自分で研究方法を考えていくような、そういう領域でした。 ──渋滞学のパイオニア、西成 活裕教授の研究室ですね。 そうです。まだ誰もモデル化していない渋滞現象を新しいモデルで記述したり、分析してみるということを学び、「数理モデルってこう作ればいいんだな」ということがわかってきました。卒業後は、別のところで脳の研究を始めたのですが、脳科学というのは面白くて、マウスやハエの脳を分析する生物学、精神疾患などを分析する医学、人間の心を調べるために脳を分析する心理学など、さまざまな領域があります。扱う対象も多岐にわたり、データの種類も多様です。
──脳の分野でも数理モデルを使われるのですか。 モデルというより、大量のデータをどう解析するかが主眼でした。脳の研究者たちは「新しいタイプのデータをどう組み合わせるべきか」を一から考える訓練を積んでいるわけではなく、そこに私が入っていったので珍しがられました(笑)。「使えそうなやつがいる」ということでさまざまな種類のデータが集まり、「普通はこう解析するけど別の方法でやったらどうか」という試行錯誤の機会をたくさんいただきました。ここまでいろいろな脳のデータを扱っている研究者は世界でもいなかったので、とてもラッキーな環境だったなと思っています。 ──そういったご経験が、書籍の執筆にも繋がっているのでしょうか。 ちょうどその頃、「数理モデルの本を書かないか」とお誘いがありました。数理モデルといっても、応用数学、物理、統計学、データサイエンスなど、分野が違えば使っているモデルもまったく違います。いろいろな分野にいろいろな数理モデルが散らばっている状態で、それを広くまとめた研究や書籍はまだ存在していなかった。幸い私は分野横断的に研究してきて、各分野における目的や考え方も理解できるので、そういう経験を活かして数理モデルの全体像をまとめた感じです。「数理モデルをどう扱えば良いか」という概念レベルの話が多く書いてあります。 ──この『データ分析のための数理モデル入門』が大きな注目を集め、シリーズとして続いていますね。 2冊目の『分析者のためのデータ解釈学入門』は、データ分析の要所を新しい視点でまとめた入門書で、部数的にはこれが一番売れました(笑)。
データ分析に関わる江崎先生の著作。『データ分析のための数理モデル入門』(ソシム/2020年5月) あらゆるデータ分析手法を「数理モデル」という統一的な視点で整理した教科書(左)。『分析者のためのデータ解釈学入門』(ソシム/2020年12月) データを正しく解釈するために、はまりやすい落とし穴を網羅的に解説した一冊(中)。『指標・特徴量の設計から始めるデータ可視化学入門』(2023年12月) データの可視化にはどんな指標に着目すべきか設計能力に焦点を当てた入門書(右)。
──2020年に2冊も出版され、2021年には株式会社infonervを設立されていますね。 起業は昔からやりたいと思っていてタイミングをうかがっていたのですが、2020年から物流の研究を本格的に始めたこともあってビジネスアイディアが浮かびました。書籍を出し、「江崎はデータ分析やモデリングの人」という認知も広がり、「東大の先生でちゃんと本も書いている人が作ったプロダクト」という見せ方ができたのも大きかったと思います。ここで提供しているのは、「α-発注」というEC小売りや卸売り向けの自動発注AI SaaSで、おかげさまで今では国内外の多くの事業者さまにお使いいただいています。
江崎先生が開発した「α-発注」のホームページ。
──先生がこれまでに培われた技術を社会実装されたのが「α-発注」だと思いますが、なぜ理論や研究の世界からカオスな実業の世界へと踏み込まれたのでしょうか。 理論は理論で楽しいんですけど、私の場合それが目的ではなくて、基本的には「自分のできることで世の中がちょっとでも良くなる」というところにモチベーションを感じています。研究は自分の選択肢を増やして価値を高めるための手段のひとつでもあります。まずはそこを一生懸命にやっているうちに、いろいろなチャンスをいただけるようになったという感じです。 ──とはいえ、「α-発注」がサポートする発注業務には、さまざまな現実的制約があります。事業者によって利用しているシステムなども違うと思うのですが、うまくいくものなのでしょうか。 もちろん細かいシステムの要件はお客さまごとに異なりますが、基本的に「発注」をかけてモノが「入出荷」されるというフローは一緒なので、接合に必要な機能を作りこむことで一つの基盤で幅広いお客さまにサービスを提供できるようになっています。もちろん、どんなお客さまにも対応できるようアップデートしていく必要があるので、全体設計には工夫が必要でした。サービス開始から6~7年経ちますが、自分だけでも2万行以上コードを書いています。
また、「数理モデルを現場に応用しましょう」と言う人は結構いますが、理論が大事にしていることと現場が必要としていることはまったく違うんです。現場の人は課題が解決できれば良くて、数学的な理論はどうでもいいですから。そういう現実的な課題を一つひとつ丹念に潰していかないと物事は前に進みません。例えば、「汚いデータが入ってきてしまうのは運用上仕方がない、だったらそれでも動くような仕組みにしましょう」ということを私たちはひたすら繰り返しています。むしろそのプロセスの方が本質というか。現場では細かいAI技術の云々というのは瑣末(さまつ)なことに過ぎないんです。 ──お客さまに寄り添いながら、大規模なシステムを正しく実装する。非常に高度なサービスなのに月額数万円から利用できる点にも驚きました。 もちろん使う量にもよりますが、小規模なEC事業者さんであればその価格帯でご利用いただけます。お客さまごとに基盤を作ると莫大な費用がかかりますが、先ほども言ったように基本的には一つの基盤で動きますので、その分お安くなっていて、ブラウザからアクセスすればすぐに使えるようになっています。現在はフランスのオートバックス社をはじめ数十社に導入いただき、徐々に実績も増えてきたところ。ようやく次の段階へと広げていける状況になってきました。
数理モデルとは、現実を抽象化し、物事の関係性を仮定したもの
──そもそも先生の活動の軸になっている数理モデルとは、一体どういうものなのでしょう。 数理モデルというのは、物事の関係性を数式で表したものだと思ってください。例えば株価や体重など、さまざまな要因で変化する数値を表したものを変数と言いますが、この変数と別の変数の関係性がわかると、対象となる物事の基本的なメカニズムを把握することができ、予測が可能になったりします。ただ、現実の物事を数式で表そうとするとものすごい数の変数が必要になってしまうので、それらを全部見るのではなく、関係性のコアになっている部分を紐解き、大事な変数だけをピックアップする。そうすることで、よりシンプルに関係性を説明してみようというのが数理モデリングの世界です。ポイントは、余計なものを削ぎ落とし、物事を抽象化すること。削ぎ落とし過ぎてもうまくいかないですし、削ぎ落としが足りないと複雑なモデルになり過ぎて実用性がなくなってしまいます。 ──私たちの暮らしの中では、どんな数理モデルが動いていますか。 天気予報や経路検索、ネットショッピングのおすすめ機能など、予測系のものは大体数理モデルがベースになっています。なかでも生成AIは、数理モデルの複雑さの権化のような存在ですね。 ──数理モデルは物事の真理を表している、と言うと大袈裟でしょうか。 ある物事の関係性を数理モデルで仮定した時、それがものすごく現実にマッチすると真理を突いていると言えなくもないですが、実際はどこまで行っても真理に近づけているだけなんです。 ──抽象化し、仮定することで、限りなく真理に近づけようとするということですね。 そうですね。数理モデルは「こう仮定するとこういう結果が出てくる」ということをやっているに過ぎません。仮定が間違っていれば当然間違ったものが出てきますし、たとえ何かを説明できているように見えても、本当はもっと別のメカニズムがあるのに間違ったメカニズムを当てはめているだけかもしれない。だからこそモデルをつくる時は「何を仮定しているのか」がとても大事になります。必要な仮定をどこまで入れて、不必要な仮定をどこまで外せるか。まさに抽象化と仮定が数理モデルの軸になっています。
インフラメカニズムから見えてくる生成AIにはできない仕事
──今年の2月には、ビジネス書として『生成AIが変える世界を紐解くINFRA MECHANISM』を出版されました。分野横断的な知見を持つ江崎先生が生成AI時代をどう捉えているのか、まさに注目の一冊となっているわけですが、どのような問題意識でこの本を書かれたのでしょうか。 今、生成AIが世の中を大きく変えつつありますが、同じようなことがインターネットやスマートフォンが広まった時も起きました。レストランは食べログで探して予約するようになり、道順は経路検索するのが当たり前。これは昔とはまったく違う行動パターンです。一方で変わらないものもあります。例えば蕎麦屋のビジネスは何百年も変わっていません。細かい仕入れや広告方法は変わったかもしれませんが、「蕎麦を売ってお客さんがお金を払う」という構造は変わらないままです。つまり、インターネットやスマートフォンが登場しても蕎麦屋の価値は変わらなかったということになります。 変わるものと変わらないものの違いは何か。また、変わるとしたらどう変わるのか。ということがまず気になりまして。インターネットやスマートフォン、生成AIをインフラとして捉えた場合、他のさまざまなインフラが誕生した時にどのような社会変化が起きたのかをたくさん調べたら、そこに何らかの共通法則が見えてくるのではないかと考えました。先ほども言った抽象化ですが、「このインフラにはこのような性質がある」ということを抽象化できれば、生成AIがインフラになった時のことも予測できるのではないかということです。
『生成AIが変える世界を紐解くINFRA MECHANISMー時代を生き残るための7つの戦略』(ソシム/2026年2月)。水道・電気・鉄道・活版印刷・GPSなど歴史上のあらゆるインフラ事例を分析し、「インフラが社会を変えるメカニズム(共通法則)」を抽出。AI時代の社会変化と生き残り戦略を論じた最新著作。
──ここでも抽象化がポイントになるのですね。 数理モデルも書籍もそうですが、一旦抽象化して考えてから細かい肉付けをしていくというのが私のスタイルなのかもしれません。最近のSNSでは「生成AIであれもこれも変わる」というような投稿が目立ちますが、その内容は玉石混交(ぎょくせきこんこう)(※)といった感じです。そういう状況の中でもうちょっと解像度の高い予測、「こういうメカニズムだと将来こういうことが起きるよ」と説得力を持って伝えられるようなツールがあるといいなと思い、この本を書くことにしました。
※玉石混交…良いものと悪いもの、優れたものと劣ったものが入り混じっていること。
──白熱電球というインフラが変えた人類の生物学的リズム、活版印刷というインフラがもたらした都市の成長速度の違いなど、この本の中には300件近い「インフラが社会を変えた事例」がまとめられています。これらすべてに共通の法則があるのですか。 たった一つの共通法則があるわけではありません。さまざまなインフラから導かれる共通法則というのはたくさんあり、その中から自分の目的やケースに合ったものを当てはめてもらうと参考になる、といった内容になっています。例えば「インフラにはビジネスを強力に均質化するメカニズムがある」という共通法則を使って「生成AIは何を均質化するのか」を考えてみると、今後何が起こるのかが予測しやすくなりますよね。 ただ、均質化が悪かというとそういうことでもなくて、私たちは今、量産品の均質化された洋服を普通に着ています。昔はテーラーメードの服しかなかったわけですが、現代においては「同じ服を着ていても別にいい」という感覚になっている。避けられない均質化というものはあるわけですが、「それでいい」という方向に社会全体が変わっていくこともあります。これはあくまで一例ですが、本書では「認識変容」や「社会変革」といった視点でさまざまなインフラ事例を集め、そこで起きたことが生成AIインフラの文脈でも起きたらどんなシナリオになるかを予測し、激動の時代を生き抜くための7つの戦略をまとめています。「より良い社会を目指す旅路の羅針盤」として使っていただけたら嬉しいですね。
──詳しい内容はぜひ書籍を読んでいただくとして、江崎先生は生成AIがどのように世界を変えるとお考えですか。 本の中でも触れましたが、昔、NASAにはロケットや人工衛星の軌道を計算する「計算手」という人たちがいました。今はコンピューターで計算するのが当たり前ですが、当時は人間がやった方が信頼感があるという時代だったんです。計算手は「ものすごく頭の良い人たちが高度な計算をするかっこいい仕事」だったわけですが、今はもうなくなってしまいました。つまり「軌道の計算ができても生計を立てられない」時代に変わってしまったわけです。これと同じようなことが起きると考えるとわかりやすいかもしれません。私たちがパソコンを使ってやっていることは、これからはすべて生成AIがやってくれる。だからパワポやエクセルが使えるだけではお金がもらえなくなる。そういった変化の後に何が残るかというと、「パソコンだけではできない作業」ということになります。 ──パソコンだけではできない作業というと例はありますか。 例えば生成AIというインフラが浸透した世界は、「東大生のアルバイトをリモートなら無料で何人でも使える」状態だとイメージしてください。マニュアル化できるような仕事であれば、そのほとんどが「これやっておいて」と頼むだけで完了します。でも、自分の仕事を全部任せられるかというと、そんなことはないと思うんです。例えば取引先と会って交渉したり、あるいはリスクをとって物事を進めたり、自分が責任を取らなくてはならない仕事というのは必ず残ります。本の中では「高信頼・高文脈・高責任な仕事」と表現しましたが、最終的には「責任を取る」というところが人間に残されるものではないかと思っています。 ──責任を取るのが怖い、苦手という人も多そうですが…。 確かに責任を伴う意思決定をし続けていくというのは辛いことかもしれませんね。ただ、そういう能力がどうしても必要になる時代がすぐそこまで来ているということです。
〇〇することで鍛えられる生成AI時代を生き抜く力
──責任を取る能力というのは、どうやって鍛えればいいでしょうか。 基本的には「結果がどうなるかわからないことをやってみる」ことです。責任を取るとは、意思決定をすること。何かを自発的にやってみようと思わない限り、そういう力を鍛えることはできません。失敗するかもしれない、期待通りにならないかもしれない、それでもチャレンジしてみる。そういう姿勢が当たり前になるというか、息を吸うようにできるマインドが、これからの時代には必要なんだと思います。決まりきった安全な場所でゲームをしたり、YouTubeを観ているだけでは、なかなか意思決定の力はつきませんから。 ──「これをやってみよう」というそもそもの発想力も大切そうですね。 これはまた別の文脈かもしれませんが、私はデータサイエンティスト向けの講義で「仮説を立てられるようになりましょう」とよく言っています。「この物事の裏側ではもしかしたらこういうことが起こっているかもしれない」という仮説をいかにたくさん出せるか、しかもそれらがきちんと芯を食っているか、というのがデータサイエンティストとしての価値だからです。分析だけなら誰でもできる、いかに発想を飛ばせるかということですね。 この発想力は、普段から物事の背後にある理由を考えることで鍛えられると思っています。例えばペットボトルの形にしても、お店のメニューのデザインにしても、誰かが何かを意図して作っているわけで、「そうなっている理由」があるはず。まずはそこを考えてみるというか、合っているかどうかはさておき、一旦考えてみる習慣を身に付けると、現実世界の解像度も上がってきますし、いろいろな角度から発想する力が鍛えられるのではないでしょうか。 ──学生たちへの授業も、やはりそういった能力を刺激する方向性ですか。 今はレポートなんて生成AIですぐにできてしまうので、先日はあえて生成AIを使ってもらい、「身の回りのものをテーマに、それがあなたの手に届くまでの流通システムを調べ、改善点を考えてください」という課題を出しました。評価のポイントは、まず、生産拠点がどこにあり、流通センターが何箇所あって、どういう配送の仕組みになっているかという流通システムをなるべく具体的に調べること。次に、ありきたりの製品ではなく面白いテーマを選ぶことです。 これ、実はなかなか難しい課題でした。なぜかというと、流通システムを調べるならありきたりの製品の方が情報が多いですが、例えば「テニスのガット」のようなマニアックなものをテーマにするとあまり情報が出てきません。レポートのクオリティを高めるためにはこの両方を成立させなくてはいけない。そのためにはかなりの試行錯誤が必要です。テーマ設定の面白さと情報公開量のバランスを判断し、そのクオリティに責任を持つ。生成AI時代の人間は「マネージャーとして良い仕事ができるかどうか」が大事になってくるので、ある意味答えのない問題というか、「価値のあることを生成AIを使ってやってみる」という現実の課題に近いことを実際にやってもらっています。 ──その一方でお子さま世代について、これからの初等教育や中等教育のあり方についてはどうお考えですか。 生成AIを使えば、数学は簡単に解けるし、英語も翻訳してくれる。文章だって書いてくれるし、要約もあっという間。それが当たり前になってしまうと、「自分でやり切る力」がどんどん失われていくかもしれません。外部の便利なツールに頼らず、自分の頭で考え抜く力というのは絶対に必要なものだと思っています。こういった基礎的な学力がないと、「生成AIが言っているから大丈夫」と思考が停止してしまう。それでは先ほども言ったように責任が取れなくなり、人としての価値が出せなくなってしまいます。
江崎先生から、千葉県の皆さまへ
──2025年2月には、ちばぎんグループのエッジテクノロジー株式会社の技術顧問に就任されました。銀行はまさにデータの宝庫だと思うのですが、先生のお力はどのように発揮されますか。 今あるデータから「予測モデルを作りましょう」というのは誰にでもできますが、私はもっとなんというか、ガチャガチャしたことが得意なので(笑)。例えば新しい事業を立ち上げる時、やりたいことがあっても「データが揃わないからできない」ということがよくあります。「あちらを立てればこちらが立たず」という状況で、「今のままではできないが、データをこう置き換えたらこういうことができる」と新しい方向性をアドバイスしたり、いろいろな制約の中で「できないことをできるようにする」という部分でお役に立てたらなと思っています。 ──ちばぎんグループのパーパスは、「一人ひとりの思いを、もっと実現できる地域社会にする」こと。最後に一言、千葉県にお住まいの皆さまにアドバイスをお願いします。 生成AIを使えば、プログラミングができない人でも営業管理ダッシュボードを作れたり、弁護士に聞かなくてはわからないビジネス上の法律なども、一般論レベルだったらすぐ答えてくれます。コスト面でできなかったことができるようになり、新たなチャンスが広がるタイミングでもあるので、例えば農家の方であれば、出荷時の画像認識による商品管理システムみたいなものを自作してみるのもいいかもしれません。 「生成AIをうまく使う方法」みたいな情報も溢れていますが、大事なのは先ほども言った通り「何をして価値を生むか」というそもそもの発想や責任の取り方です。小手先の技術というのは、生成AIの進化とともにすぐになくなってしまいます。繰り返しになりますが、「東大生のアルバイト使い放題だったら何をするか」を考えてみれば、きっと「こんなこともできる」「あんなこともできる」といろいろなアイデアが浮かんでくるはず。生成AIという新しいインフラを使って、ぜひやりたいことを実現していただければと思います。
※内容は、取材当時のものです。現在の情報と異なる場合があります。