小湊鐵道・いすみ鉄道沿線の事業者が、ちばぎんグループの地域商社であるちばぎん商店のクラウドファンディング「C-VALUE」を通じて地域の魅力を発信する「房総横断鉄道たすきプロジェクト」。全21件に及ぶ個性あふれる企画の数々は、どのようなきっかけで立ち上がり、どのように目標を達成できたのでしょうか。「たすきSnap」では、そんな企画の裏側に迫り、参加事業者一人ひとりのリアルな声をお届けします。
第1回目は、海と川に恵まれた外房の街・いすみ市で立ち上がった、「大原たすきプロジェクト」と「夷隅川リバークリーンプロジェクト」をご紹介します。
勇壮豪快!大原はだか祭り!地元企業が先代の”たすき”を繋ぐ。
千葉県いすみ市大原地区で江戸時代から続く「大原はだか祭り」。はだかの男たちが太平洋の大波に向かって神輿を担ぎ込む勇壮な光景でも知られ、毎年県内外から大勢の観光客が押し寄せます。しかし、年々進む過疎化によって運営の資金難に直面。これまで神社の氏子衆の資金でなんとか存続させてきたお祭りを、「今こそ地元企業の力で支えたい」と立ち上がった人たちがいました。
〜たすきSnap 01 木戸泉酒造五代目 蔵元兼杜氏 荘司 勇人さん〜お神酒の造り手が動き出す。クラファンでお祭りの意義を発信。
木戸泉酒造五代目 蔵元兼杜氏・荘司 勇人(しょうじ はやと)さん。2013年より現職を務め、しっかりとしたコクの中に酸の特徴がある伝統の味を守り抜いています。
「お祭りにお神酒を奉納できることは、地元で酒造りをさせていただいている企業として本当に誇らしく思います」。添加物や化学肥料を一切使用しない自然醸造の日本酒造りにこだわり、100年以上にわたり大原はだか祭りのお神酒を造り続けてきた木戸泉酒造。五代目 蔵元兼杜氏・荘司勇人さんはプロジェクトへの思いを語ります。
荘司さん:
私たちにとって大原はだか祭りは、五穀豊穣と大漁祈願を込めた大切な神事。一年に一度、町を離れた人たちも故郷に集い、先祖から受け継いできた「助け合い」の精神を確かめ合う行事でもあります。一方で、人口減少によりお宮や神輿の修繕費がかさみ、運営費の確保に苦しむ氏子さんの声を耳にすることも。木戸泉酒造では長年お神酒を奉納させていただき、私自身も神輿を担ぎ続けてきましたので、こんな時こそ少しでも恩返しできないかと、お祭りの運営資金を募る「大原たすきプロジェクト」を立ち上げました。
せっかく地元のお祭りを盛り上げるならと、縁のあった地元企業たちも力を貸してくれました。初めてのクラウドファンディングだったので、ちばぎん商店さんのサポートのもと、有限会社アルファさん、鴨川萬祝染(まいわいぞめ)鈴染さんを加えた3社で取り組むことに。返礼品には、漁師伝統の萬祝染の柄をあしらったお神酒、干物、萬祝染のトートバッグなど、お祭りだけでなく酒、魚、工芸品という地域の魅力を感じてもらえるものを用意しました。「お神酒のラベルに萬祝を使いたい」という妻の沙織のアイデアを伝えたところ、ちばぎん商店さんから鈴染さんを紹介いただいたんです。
萬祝の伝統的な図柄をあしらったクラファンオリジナルのお神酒と、神社の名を入れた限定ラベルのお神酒。
荘司さん:
いざプロジェクトがスタートすると、意外にも支援してくれた方の多くは市外の方でした。かつての地元民や似たお祭りを持つ地域の方から、「改めてはだか祭りの価値に気づいた」「自分の地域のお祭りを見直すきっかけになった」という声が寄せられ、ありがたくも目標金額の105%を達成。集まった支援金とお神酒を18の神社に奉納したときには、氏子の方たちに例年以上に喜んでいただいたり、「プロジェクトを見たよ」と声をかけてもらったり、反響は予想以上に大きく、取組みを継続していく意味があると実感しました。
これまでクラファンの経験はありませんでしたが、ちばぎん商店さんにはSNS運用などで親身にサポートいただき、「地域を一つにする」という同じ目的で伴走していただきました。来年以降も賛同してもらえる地元企業と手を取り合いながら、より大きな支援をいただけるプロジェクトとしてこの“たすき”を繋いでいきたいと思っています。
〜たすきSnap 02 有限会社アルファ 渡邉 一洋さん〜 祭りびとが語る、お祭りが地域を安らかにする理由
有限会社アルファ代表取締役・渡邉 一洋(わたなべ かずひろ)さん。大原漁港の近くで干物やお土産品を扱う「海の直売所 アルファ」を経営しています。
漁業の町・大原の漁師家庭に生まれ育ち、干物づくりなどの水産加工業を営む有限会社アルファ代表取締役・渡邉一洋さんも、「大原たすきプロジェクト」を担った人物の一人です。網元である本家には漁師伝統の品・萬祝半纏(まいわいはんてん)が伝わっており、本プロジェクトの「お酒・干物・萬祝」の相性の良さを感じたそうです。
渡邉さん:
今回のプロジェクトに賛同したのは、地元企業が協力して新しいものを生み出すのが楽しいんじゃないかと思ったからです。小さい頃から家業を手伝い、はだか祭りにも長年参加してきましたが、私は仕事でもお祭りでも根底に楽しさがないと続かない性格なんです。それに、お祭り好きの姪と木戸泉酒造の女将・沙織さんが友だちというご縁もありました。
返礼品でもある酸化防止剤を使わず冷凍しない伝統製法の干物は、噛めば噛むほど滋味が溢れ出します。
渡邉さん:
大原という町は、古くから移住漁師をよそ者扱いせずに受け入れ、互いを助け合いながら共存共栄してきました。いすみ市は“移住したい街”としても知られますが(*)、その背景にはこの混ざり合う土壌があるんです。それははだか祭りにも表れています。地元出身者も移住者も一緒になって神輿を担ぎ、苦楽を共にすることで自然と地域に安心感が芽生えていく。お祭りといった地域文化を継承することは、安心して暮らせる地域を支えていく原点なんだと思います。
*「住みたい田舎ベストランキング」首都圏エリアで9年連続第1位を獲得
いすみ市:
渡邉さん:
今はお祭りのサポート役に徹しようということで、担ぎ手である若衆が楽しめるように振る舞い酒の提供をしたり、地域の清掃をしたりしています。このプロジェクトについても、木戸泉さんのお神酒をハブとした地元企業のコラボレーションを縁の下で支え、地域の“和”がもっと広がればいいなと考えています。
お祭りの前になると大原の人はすれ違う度にニコって笑うんです。「祭りだね」って。もしお祭りがなくなれば、町がどこか殺伐として、みんながビクビクしながら暮らさなければならない。でもお祭りを通じて地元愛が深まれば、「この地が好きだからここで仕事をしたい」と思う人が増えて地域の活性化にも繋がるかもしれません。
お祭り文化が全国的に衰退していくなかで、今回のように地域文化を守るプロジェクトを支援してくれたちばぎん商店さんには感謝でいっぱいです。
〜たすきSnap 03 鴨川萬祝染 鈴染四代目 鈴木 理規さん〜 地域を越えて繋がる意味。萬祝染職人が信じる外房の可能性。
鴨川萬祝染 鈴染三代目 鈴木 幸祐(すずき こうすけ)さんと四代目 理規(りき)さん。家族経営で技を継承しています。
「大原たすきプロジェクト」3つ目の参加企業は、鴨川にある萬祝染工房、鈴染(すずせん)。「萬祝(まいわい)」とは、元来大漁の宴の名で、鶴亀や宝船などの派手な図柄を特徴とする漁師伝統の晴れ着のこと。今年創業100年を迎えた鈴染の四代目・鈴木理規さんは、身に付けやすい小物の展開やデザイン提供など、萬祝染のさらなる発展にも力を注いでいます。
鈴木さん:
今回プロジェクトに参加させていただいたのは、ちばぎん商店さんに声をかけていただいたのがきっかけです。かつては大原の町にもたくさんの紺屋(染物屋)があり、昔から萬祝の製作で関わってきたご縁があった地域なので、お話をいただいたときにはぜひ参加したいと思いました。
以前から大原はだか祭りにかける地元の方々の熱量の大きさは知っていましたが、企画の発起人である木戸泉酒造さんの想いの強さには驚きました。また、クラウドファンディングの説明でも、はだか祭りの文化や歴史のストーリーがしっかりと発信されていたからこそ、私を含めいろいろな人が「素敵なお祭りは衰退させちゃいけないな」と心動かされたんだと思います。それが証明されたようで、目標金額達成の連絡を受けたときは本当に嬉しかったですね。
提供デザインとトートバッグ。鶴と亀、扇の中の松竹梅に加え、「大漁」の文字。縁起物を取り込んだ昔ながらの図柄を提供しました。
鈴木さん:
このようなプロジェクトに参加したのは初めてだったのですが、普段接点を持てないような、例えば日本酒好きのお客さまがSNSに流入するなど、参加企業間の相乗効果を感じることもできました。ちばぎん商店さんに仲介してもらうことで、うちのような小さな企業がいろいろな企業と安心して関係性を築いていける点も、たすきプロジェクトのメリットだと思います。
クラファン終了後には、木戸泉酒造さんから「これを一過性で終わらせず、今後も一緒にやっていきたい」というお話をいただき、人と人の繋がりを作っていくことで、もっともっと応援の熱量を増やしていけるプロジェクトだと感じています。
鴨川周辺には尖ったコンセプトの面白いお店が多いので、例えばそういう企業を巻き込んで外房エリアが盛り上がれば、都心から人の足が伸びてそこに至るまでの千葉県内陸にも人の流れが生まれるかもしれません。今後もちばぎん商店さんにサポートいただくことで、今までにない各市町村一体となった魅力発信ができたらいいなと思っています。
〜たすきSnap 04 ワォアクションスポーツ株式会社 森 和仁さん〜 赤ちゃんもペットも楽しめるSUP!? “宝探し”感覚で夷隅川を守る
ワォアクションスポーツ株式会社代表取締役 森 和仁(もり かずひと)さん。経営するいすみパドルクラブでは、SUPに加え、BBQやキャンプなどのアウトドアも楽しめます。
いすみ市で立ち上がったプロジェクトをもう一つご紹介します。企画者は夷隅川でパドルクラブを経営するワォアクションスポーツ株式会社 代表取締役・森 和仁さん。夷隅川は蛇行率も、生息生物数も全国2位を誇る日本有数の川ですが(*)、近年は上流からたくさんのゴミが流れつき、自然環境が脅かされているといいます。
森さん:
今から約20年前、SUPを販売するために個人練習をしたのが夷隅川でした。この川は特殊な地形で流れが緩く、風も弱い。しかもカーブが多くて、その先にどんな景色が待っているのかジャングルに迷い込んだかのようなワクワク感があります。穏やかな自然環境は初心者向きで、幼児から高齢者、車いす利用者や大型犬にいたるまで、ファミリー層を中心にSUPクルーズを楽しんでいただいております。
しかし、どうしてもゴミが目についてしまう。そこで10年ほど前から、よりキレイな景観を楽しんでもらおうと川沿いの樹木にまぎれるゴミをSUPに乗って回収し始めたんです。最初はスタッフによる自主的な活動でしたが、大勢のほうが楽しいからと、清掃イベントとしてお客さまを募ってみることに。やがて地元NPOがスポンサーにつき、参加費無料でも開催できるようになりました。今回のたすきプロジェクトでは、このクリーン活動とその後のBBQを主な返礼品として、環境保護の啓蒙費を募るクラファンを立ち上げました。
実は、過去にクラファンで納得のいく成果が上がらなかった経験があり、最初は参加をためらっていたんです。しかし、ちばぎん商店の野中さんとお話しするうちに心変わりしました。彼が提案してくれるゴールまでの細かな目標管理や、日々相談に乗っていただける手厚いサポートがあれば、今度こそ上手くいくかもしれない。そう思って決心したんです。そしていざプロジェクトが始まってみると、千葉銀行の営業店でのチラシ配布やラジオ番組出演の調整など多方面にわたって支援していただき、ちばぎん商店さんの地元を応援したい気持ちを実感しましたね。おかげさまで支援金は順調に集まりましたが、目標達成まではドキドキでした。
ゴミを取る役、ボードを制御する役に別れ自然とチームプレーが生まれてくるといいます。
森さん:
クラファンで支援してくれた方々は、川辺のゴミをまるで“宝物”のように夢中になって探し集めていました(笑)。子どもたちの楽しむ様子を見ていたら思ったんです。「たすきプロジェクト」という名前には、自分たちの活動の“たすき”を次世代へ繋いでいく意味もあるんだなって。本当に、すごくいい名前ですよね。
夷隅川は山から海に栄養源を運び、米や酒、魚などのいすみの豊かな食物を育んでいます。そういう環境連鎖のなかで重要な役割を担う夷隅川を、これからも守っていきたい。プロジェクトは終了しましたが、リバークリーン活動は毎月第2土曜日に参加費無料で引き続き開催しています。まずは気軽に遊びにいらしてください!
お店情報
ワォアクションスポーツ株式会社 いすみパドルクラブ