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2007年3月末に導入されたバーゼルⅡによって、銀行は諸リスクをより精緻に評価し、統合的に管理していくことが求められた。当行も、バーゼルⅡの三つの柱(最低所要自己資本比率※8、金融機関の自己管理と監督上の検証※9、市場規律※10)に対応するかたちでリスク管理態勢を高度化していった。
最低所要自己資本比率の算定に新たにオペレーショナルリスクが加わったことで、同リスクの管理部署を定めたほか、「オペレーショナルリスク管理委員会」を設置した。また、2007年より自己資本比率の四半期開示を開始した。
本部機構も改定した。2007年6月、経営企画部統合リスク管理グループや総務部コンプライアンス統括グループなどの所管業務を集約して、リスク・コンプライアンス統括部を設置した。さらに、2009年6月には同部をリスク管理部とコンプライアンス部に分割し、業務の専門性を高めていった。
なお、2007年12月には、金利リスクの抑制とアウトライヤー比率※11の低下を目的として、住宅ローンの証券化にも取り組んだ。
当行では、これまで「大規模災害対策規定」(1996年)、「コンピュータシステムに対する危機管理計画」(1999年)、「預金流失に係る危機管理計画」(2001年)を制定し、有事を想定した訓練も重ねてきた。
その後も、米国同時多発テロ(2001年)、大手行の大規模システム障害(2002年)、SARS※12の流行(2002~2003年頃)など、金融機関の業務継続を脅かす事態が相次いで発生したことで、一層の体制強化に取り組んだ。
まず、2008年3月の「業務継続に係る基本規定」の制定を皮切りに、9月までに諸規定を整備した。想定すべき危機事例を、自然災害、コンピュータ事故、大規模停電、テロリズム、疫病の流行、風説の流布と整理したうえで、預金の払戻し、振込の受付・発信など9業務を緊急時に優先的に復旧させる重要業務と定めた。さらに重要業務の復旧目標時間を設定して、そのための体制整備を図るなど、徐々に危機対応を体系化していった。
その後、2009年に新型インフルエンザが流行し、職員にも感染が広がったことで営業店の運営に支障をきたす事象が発生した。これを教訓として、「業務継続に係る実施規定(疾病編)」を追加した。後年、新型コロナウイルス感染症がまん延した際にも、こうした経験が生かされた。
2005〜2006年にかけ、職員による顧客の預り金・融資実行金の着服など6件もの不祥事件が相次いで発覚し、当行は2007年3月16日、関東財務局より業務改善命令を受けた。その内容は、「法令等遵守態勢を確立し健全な業務運営を確保するため、内部管理態勢の充実・強化を求める」というものであった。
これを踏まえ、3月18日の休日に本部の全部室長、全営業店長、全関連会社社長を緊急招集し、全店長説明会を開催した。翌19日には頭取自らビデオメッセージを通じて、グループ全職員に法令遵守意識の徹底を訴えた。また、経営責任を明確にするため、頭取以下全取締役および関連する執行役員の報酬を一部カットした。
そして、5項目からなる業務改善計画を策定し、4月13日、関東財務局長に提出した。以降、3か月ごとに本計画に基づく実施状況を報告した。
※8 最低所要自己資本比率
銀行が満たすべき最低限の自己資本比率の水準。バーゼルⅡではリスク・アセット(分母)にオペレーショナルリスクが加わった。
※9 金融機関の自己管理と監督上の検証
銀行の自主的なリスク管理を促すとともに、監督当局がこれを検証・評価し、必要に応じて監督上の措置を行うもの。
※10 市場規律
自己資本比率やリスク管理態勢などの開示を充実させることで、外部評価による銀行経営の健全性の維持・向上を図るもの。
※11 アウトライヤー比率
自己資本額に対する銀行勘定の金利リスクの割合のこと。
※12 SARS
重症急性呼吸器症候群の略で、SARSウイルスによる新種の感染症。中国・香港を中心に8,000人以上が感染し、800人近くが死亡した。