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2014年6月、内閣府男女共同参画局に設置された「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」※25が行動宣言を公表したことなどをきっかけに、組織における女性活躍推進の動きが社会全体に広がっていった。同会にコアメンバーとして参画していた佐久間頭取を中心に、当行でも意欲・能力のある女性が活躍できる組織への変革を進めた。
7月に世代や性別、職場や職階の異なるメンバーで構成する「ダイバーシティ推進委員会」を設置したのに続き、10月に人材育成部の女性活躍サポートチームを独立させ、ダイバーシティ推進部を新設した。両組織が連携して、各種制度の整備・改善や職員の意識・行動改革などを主導し、職域拡大(仕事をつくる)・人材育成(ひとを育てる)・環境整備(職場をつくる)に一体的に取り組んでいくとした。
同年8月には、2020年度までに①リーダー職※26の女性比率を30%、②管理職※27の女性比率を20%とする「女性の管理職登用に関する数値目標」を公表し、能力のある女性職員の管理職登用や将来の幹部人材育成に向けた研修プログラムの整備などに力を入れていった。10月にダイバーシティ推進部とお客さまサービス部に初の女性部長が就任したほか、2015年6月の株主総会では新たに女性社外取締役2名が選任された。
また、2016年7月には「キャリアサポート制度」を導入し、役員などが女性管理職・リーダー職のメンターとなってキャリアアップに向けた個別育成をスタートした。その後、執行役員や部長職に就く女性が増えたため、2020年9月に女性部長が後輩女性を育成する「メンタリングセッション」に制度をリニューアルした。
行内報やCVCニュース※28ではさまざまなロールモデルを紹介し、他にも、経営陣と女性幹部職員との定期的な意見交換会、渉外担当者向けの勉強会、行内外への積極的なトレーニー派遣など、階層や職種に応じてきめ細かなサポートを行った。
なお、期限までに掲げた数値目標を達成できたことから、さらなる高みを目指し、2021年4月に日本経済団体連合会(経団連)の「2030年30%へのチャレンジ」※29に賛同を表明した。
また、2016年4月と2021年7月には「女性活躍推進法」※30に基づく一般事業主行動計画を千葉労働局に届け出た。第2期計画(2021年7月2日~2026年7月1日)では、①リーダー職以上の女性比率を30%以上、②有給休暇の取得率80%以上、③男性の育児休業取得率100%の継続、の3項目を数値目標として公表した。
こうした取組みが実を結び、2018年3月に地方銀行として初めて「なでしこ銘柄」※31に選定されるなど、当行は女性活躍推進の先進企業としての評価を得ることとなった。
これまでの主な受賞・選定歴は以下のとおりである。
行内に女性活躍推進のための体制や制度を整備する一方で、業界や地域を巻き込んだネットワークの形成にも精力的に取り組んだ。
2014年11月、佐久間頭取の呼びかけで、地方銀行協会会員全64行の頭取による「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」が発足した。そして翌年4月、当行が事務局となり同会は「地銀人材バンク」※32を創設した。
「地銀人材バンク」は、地方銀行の職員にとっては転居後も同じ業種で再就職できる安心感につながり、紹介先の銀行にとっては即戦力を雇用できることから労使双方にメリットがあった。利用にあたっては性別を問わないこと、のちに親の介護を理由とした退職も対象に加えたことで多くの人がこの制度を利用した(利用者は地銀全体で2023年3月末時点で延べ286名)。創設当初はメディアにも大きく取り上げられ、その後、他業界でも同様の制度が誕生した。
地域においては佐久間頭取が発起人となり、2017年6月に「輝く女性の活躍を加速するちばのリーダーの会」が発足した。産官学のリーダー7名でスタートした同会では所属企業・団体による異業種交流会が盛んに行われており、賛同者の輪も着実に広がっている。
なお、こうした活動について国内外のシンポジウムやセミナーなどで佐久間頭取が講演する機会が増え、個人でさまざまな賞も受賞した。
これまでの主な活動成果は以下のとおりである。
当行では女性をはじめ多様な人材が活躍できる職場づくりに向けたダイバーシティ推進を持続的成長のための経営戦略と位置付け、その重要性を役職員に浸透させていった。
2015年3月には、役員や女性支店長など161名が参加した第1回ダイバーシティフォーラム※33内で「ダイバーシティ行動宣言」を公表した。そして、職場でのポスター掲出やシンボルロゴ入り名刺を使用した積極的なPRなどにより、行内のみならずさまざまなステークホルダーに当行の取組姿勢を周知した。
なお、この行動宣言に盛り込んだ「ワーク・ライフ・マネジメント」とは、職員自ら仕事と生活両面が充実するよう主体的に行動していくことを指しており、実現に向けハードとソフトの両面で環境整備を進めた。
2015年3月、千葉工業大学津田沼キャンパス内に同大学と共同の事業所内保育所「千葉工大ひまわり保育園」をオープンした。その後、単独運営で柏市内に「ひまわり保育園・かしわ」(2018年4月)を、千葉市内に「ひまわり保育園・ちば」(2018年7月)を設置した(「ひまわり保育園・かしわ」は2023年3月に閉園)。
また、女性の妊娠・出産・育児のライフイベントに合わせた休暇制度の創設や、柔軟な働き方が可能な勤務制度への見直しにより職場環境を整えていった。「育児のための短日勤務制度」(2016年8月)、「マタニティサポート休暇」※34・「チャイルドプラン休暇」※35(いずれも2016年11月)がその例である。
「ちばぎんイクメンハンドブック」(2015年8月)や「新米パパのサポートブック」(2016年2月)、「男性の育児参加ガイドブック」(2019年5月)などのサポートツールを充実させた。また、出産予定の配偶者がいる職員は「仕事も育児も!!素敵なパパ宣言」※36を所属長に提出し、計画的に育児休業が取得できるよう職場全体で応援する態勢としたことで、2018年度に男性の育児休業取得率が100%となった。
介護に直面した職員が利用しやすいよう休暇制度や勤務制度の柔軟化を図った。2019年7月には、ダイバーシティ推進部内に「育児・介護の相談窓口」を設置し、介護離職防止対策アドバイザー認定を受けた職員が個別の相談に応じている。
また、仕事と介護の両立支援セミナーの開催や一定の年齢に達した職員への介護準備研修受講の必修化、各種ガイドブックの制定により介護離職を防いでいる。
時間の有効活用、心身の健康維持の観点からメリハリのきいた働き方への移行を促すため、2016年度より人事考課の評価項目にタイムマネジメントを追加し、2018年度からは営業店の業績表彰上の評価に生産性向上の要素を加えた。2019年7月には全部室店にフレックスタイム制を導入したほか、テレビ会議システムを活用したリモート会議・研修の実施、テレワーク対応端末への切替え、サテライトオフィスの設置などにより、生産性向上と柔軟性を意識した働き方改革を進めていった。
当行のダイバーシティ経営は、女性活躍にとどまらず、障がい者やシニア世代、外国人など多様な人材が働きやすく、働きがいを持てる職場づくりにより、グループ全体の活力につなげていくことを目指している。
「障害者雇用促進法」に基づく特例子会社の認定を受けているちばぎんハートフルでは2006年の設立以降、障がい者社員の新卒採用を継続しており、社員の多能化や取扱業務の拡充などにより業容が拡大している。
なお、2022年6月末時点の障がい者雇用率は、ちばぎんハートフル等のグループ合算で、法定の2.3%を上回る2.61%となっている。
シニア人材の豊富な知識や経験、スキルなどを組織に生かすべく、職域拡大を進めている。2019年7月には退職者を含む65歳超の当行勤務経験者を雇用する「シニアパートナー制度」を創設した。
また、キャリア・ビジョンを考えるための研修や自身の適性を把握するための個別カウンセリングなどを実施し、年齢にかかわらず意欲や能力のある人材を支店長などのポストに登用している。
地銀人材バンクによる銀行業務経験者の受入れのほか、中期経営計画における課題認識等を踏まえ、IT・デジタル、M&A、信託分野などの専門人材を積極的に中途採用している。
前職での経験やスキルを生かせる適材適所での活躍はもとより、支店長、部長、グループ会社社長など組織マネジメントの責任者に就く者も増えており、中途入行者のキャリアパスが広がっている。
海外現地職員の国内業務派遣や支店長登用などにより、外国人職員の活躍機会を増やしているほか、外国人の新卒採用も行っている。人種や価値観の違いを受け入れ、個々人の能力を生かしていくことで新たな発想を生み出す企業風土を育んでいる。
就業規則等で性的指向や性自認に基づくハラスメント・差別を容認しないことを明記しているほか、e-ラーニング(イントラネットを活用した学習形態)や集合研修、行内報などを通じ、LGBTQ※37など性的少数者に対する理解促進に取り組んでいる。
また、TSUBASAアライアンスにおいても、ダイバーシティ&インクルージョンを地域の持続的な成長を実現するための競争力の源泉と位置付け、2022年4月に共同で「TSUBASA ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を行った。
※25 輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会
女性活躍を推進するためには組織トップのコミットメントが重要との認識のもと、2014年に企業経営者等9名によって発足した団体。賛同者は年々増えている。
※26 リーダー職
支店長代理など、部下を持つ職務にある職員およびそれと同等の地位にある職員であり、担当業務の責任者として組織マネジメントの職責を担う者のこと。
※27 管理職
支店長や部長など、部下を持ち、担当業務の責任者として組織の指導的地位にある者のこと。
※28 CVCニュース
1984年に放映を開始した役職員向け行内ビデオニュース。CVCは「ちばぎんビデオ・コミュニケーション」の略。
※29 2030年30%へのチャレンジ
2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にするという目標の達成に向け、経団連が会員企業・団体に対してムーブメントの形成を促す取組みのこと。
※30 女性活躍推進法
正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」。女性の個性と能力が十分に発揮できる社会を実現するため、国・地方公共団体・民間事業主(一般事業主)の各主体の女性活躍推進に関する責務等を定めている。
※31 なでしこ銘柄
経済産業省と東京証券取引所が女性活躍推進に優れた上場企業を業種ごとに選定し、中長期の企業価値向上を重視する投資家に対して魅力ある銘柄として紹介しているもの。
※32 地銀人材バンク
結婚や配偶者の転勤等による転居が理由で勤め先の地方銀行を退職せざるを得ない場合に、本人が希望すれば再就職先として転居先地域の地方銀行を紹介する制度。
※33 ダイバーシティフォーラム
職員一人ひとりがダイバーシティ推進の重要性を理解し行動できることを目的に、全役員・部長、各職場の代表が参加する意見交換会のこと。2015年以降、トップメッセージ発信の場として毎年開催している。
※34 マタニティサポート休暇
妊娠中のつわりなど体調不良時に取得できる休暇制度。
※35 チャイルドプラン休暇
不妊治療の通院時に取得できる休暇制度。
※36 仕事も育児も!!素敵なパパ宣言
育児休業の取得や家事・育児分担についての行動計画書のこと。
※37 LGBTQ
Lesbian(女性同性愛者)、Gay(男性同性愛者)、Bisexual(両性愛者)、Transgender(性別違和を有する者)、QuestioningまたはQueer(性的指向や性自認が定まっていない者)の頭文字を取った、性的少数者を表す言葉の一つ。