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2014年5月、日本創成会議が公表した「消滅可能性都市」のレポートでは、地方自治体のほぼ半数となる896の自治体が2040年までに消滅する可能性があるとして、その自治体名を挙げ、世間の注目を集めた(千葉県は54市町村中26市町村が該当)。
政府も人口減少と地方衰退の問題に一体的に取り組むとして、同年9月の内閣改造で地方創生担当大臣のポストを新設した。初代大臣に石破茂が就任し、地方創生のための各省の企画立案機能を集中させる組織として「まち・ひと・しごと創生本部」を設置した(12月に法定の組織に移行、2022年1月に「内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議」に改組)。2014年12月には第3次安倍内閣のもとで、人口の将来展望を示す「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と、それを踏まえた今後5か年の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が、3. 5兆円規模の緊急経済対策とともに閣議決定された。
翌年の「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」において、2015年度末までに地方自治体による地方版総合戦略の策定が行われることになり、「産官学金労言士」※14の連携・協力による個性あふれる地域づくりに向けた一歩が記された。
こうした一連の動きを踏まえ、2015年は地方創生元年とされた。
まち・ひと・しごと創生総合戦略の閣議決定を受け、当行では2015年3月、「地方創生関連部会議」(座長:営業本部長)を中心とする推進体制を整備し、いち早く活動をスタートさせた。地域金融機関に期待される支援分野や、当行グループのサポート体制をまとめた「地方創生サポートプログラム」を制作するとともに、ちばぎん総合研究所の知見も生かし、自治体による地方版総合戦略の策定に積極的に関与していった。この時期、自治体ごとに発足した有識者会議には近隣の営業店長がメンバーに加わることも多く、第1期(2015~2019年度)の地方版総合戦略策定時期においては県内54市町村のうち47の有識者会議に参画し、12の団体の計画策定をちばぎん総合研究所が受託した。
2015年8月、新たに頭取を委員長とする「地方創生・地域活性化委員会」を設置し、下部組織として「地方創生部会」と「事業性評価部会」を置いた。地方創生部会が地方創生関連部会議の活動を引き継ぎ、事業性評価部会が取引先企業の事業内容やライフステージに応じた経営課題の解決に向けた提案営業の推進を担った。
さらに、10月には地方創生施策の企画・推進を行う専担部署として地方創生部を新設し、以降、同部と地方創生・地域活性化委員会が緊密に連携することで、取組みの実効性を高めていった。
また、地域活性化に取り組む事業者や地域活性化事業を応援する企業等を金融面で支援するため、ファイナンスメニューも拡充した。地域経済活性化支援機構(REVIC)※15と設立した「広域ちば地域活性化ファンド」(2015年10月)、事業性評価により最長3年間の元金返済据置期間が設定できる「ちばぎん地方創生融資制度」(2015年11月)「ちばぎん古民家事業支援融資制度」(2017年5月)、発行手数料の一部で発行企業が指定する団体に物品寄贈などを行う「地方創生私募債<愛称:みらいはぐくみ債>」「スポーツ応援私募債<愛称:ちばスポーツ債>」など、豊富なラインアップのなかから、資金使途や事業特性に応じたメニューを選択できるようにした。
また、ちばぎん総合研究所は2015年度に「『千葉県創生』戦略プラン」を公表した。このレポートは、千葉県内の地域特性を数値化し、独自の分析を踏まえたうえで、地域ごとに成長戦略の描き方や取組みの方向性を提言したものである。同社は翌年以降もテーマを変えながら、地域のグランドデザインづくりに向けた提言を継続して行っている。
なお、佐久間頭取が代表幹事を務める千葉県経済同友会もちばぎん総合研究所に調査委託をし、2013年4月と2019年7月に「千葉県の30年後の将来像」と題した提言書を発行した。千葉県の今後30年間の展望や発展の方向性、必要となる取組みなどをまとめたこれらの提言書は県や県内自治体に配布され、地方創生施策の立案等に活用された。
地方版総合戦略の策定や施策と関連して、この時期、多くの自治体と地域活性化に関する連携協定を締結した(2021年9月末時点で24市町)。また、大多喜町、流山市とは域内の歴史的資源を活用した観光まちづくりの分野でアドバイザリー業務を受託した。
企業誘致、観光振興、子育て支援など連携の分野は自治体によって異なるが、当行はさまざまなソリューション機能を提供することで自治体の期待に応えていった。また、こうした協業を通じて新たにスタートさせた取組みもあった。
その一つが「移住・定住セミナー」である。2016年より、地方版総合戦略で移住促進を掲げる自治体などと連携して、地域の魅力を伝えるセミナーを定期的に開催している。先輩移住者らによるパネルディスカッションや自治体職員との個別相談会など、毎回情報発信に工夫を凝らしており、2021年は、新しい生活スタイルとして注目される二拠点居住※16をテーマに取り上げた。
もう一つは、2015年度より始めた県内自治体への観光用レンタサイクルの寄贈である。県知事が会長を務めるちばプロモーション協議会を通じ、2019年度までの5年間で30市町村に295台を寄贈した。この取組みはサイクルツーリズム※17を通じて、自治体の広域連携による地域活性化を企図したものであった。
このほか、2020年2月には「千葉・横浜パートナーシップ」で連携する横浜銀行と、南房総・三浦半島をコースに設定したサイクルスタンプラリーイベントを共催した。開催前には佐久間・大矢両頭取が一緒にコースを試走してイベントをアピールした。
前年に発生した台風・豪雨災害の被災地復興と広域サイクルツーリズムによる観光振興を目的としたこのイベントは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により1か月余りで中止となったが、自治体・観光団体・企業から多くの後援・協力を得ることができ、官民連携による地方創生の象徴的な取組みとなった。
「まち・ひと・しごと創生本部事務局」(現・内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局)では、2015年度より、金融機関等に地方創生への取組状況に係るモニタリング調査を実施しており、地方自治体と密接に連携が図れた好事例や先駆的な事例を、毎年度「地方創生に資する金融機関等の特徴的な取組事例」として選定し、公表している。
これまでに「特徴的な取組事例」に選定され、大臣表彰を受けた当行の取組みは以下のとおりである。
※14 産官学金労言士
内閣が提唱した地方創生に取り組む連携態勢を示す7字。「産」は産業界、「官」は国や地方自治体などの行政機関、「学」は大学などの教育機関、「金」は金融機関、「労」は労働団体、「言」はメディア、「士」は弁護士などの士業を表す。
※15 地域経済活性化支援機構(REVIC)
中小企業者等の事業再生支援及び専門家派遣等による地域の活性化支援を目的として設立された官民ファンド。地方銀行出身の役員が多く、2016年6月~2018年6月まで当行元専務の今井信義が社長を務めた。
※16 二拠点居住
一つの地域に定住したり、ある地域から生活拠点を完全に移すのではなく、都会と地方に二つの生活拠点を持つライフスタイルのこと。
※17 サイクルツーリズム
自転車でのツーリングを目的としたレジャーの形態または自転車を活用した観光地域づくりのこと。